au Canal Lac Biwa

20 novembre 2017 (lundi)

 

この日、京都市上下水道局から、琵琶湖疏水通船復活事業の試乗会へのお誘いをいただいた。

琵琶湖疏水の3つのトンネルの出入口の扁額、第一竪坑、蹴上インクラインの三十石船、そして四ノ宮舟溜りの案内板のデザインを無償で引き受けたことへの謝礼として。

 

琵琶湖疏水クルーズ

 

12時に三井寺前の水道局疏水事務所大津分室に集合して、12:25乗船、13:15蹴上で下船というスケジュール。

試乗は2回目だった。以前は2015年4月8日。

 

琵琶湖疏水クルーズ

ボートは新調。

救命具を完備した12の座席。屋根がアクリル板になっている。以前は屋根はビニールだった。

 

琵琶湖疏水クルーズ

2015年4月8日の試乗会で。

琵琶湖疏水

琵琶湖疏水の断面(田邉朔郎の設計図から)。水深は約1mと浅いので、ボートはほぼ平底。

 

琵琶湖疏水はかつては貨物輸送でも使われていた。1894(明治24)年から1951(昭和26)年まで、資材だけでなく、遊覧船も運航されていたそうだ。

高瀬川もそうだが、川や運河が物流の幹線道路だったのだ。

自動車や鉄道の発達で川から道路に物流回路が移るにつれて、人や物を運ぶという川の役割は衰退する。

頭ではわかっていても、ぼくはかつての時代を知らないから、なかなか実感がわかない。

 

琵琶湖疏水クルーズ

第一トンネルの入り口。

まえは気がつかなかったが、扁額(伊藤博文「気象萬千」)の上にアルファベットで設計者のSAKURO TANABEの名前が刻まれている。

扉は琵琶湖が増水したときに閉じて水量を調節するためにつくられたそうだが、一度も閉じられたことがないという。

まもなく琵琶湖側の水門ができたからだそうだ。

 

琵琶湖疏水クルーズ

 

琵琶湖疏水クルーズ

いつも思うが、第一トンネルのなかでもっとも感動的なのが第一竪坑の真下。

この日は地下水がシャワーのようにふりそそいでいた。

アクリルの屋根が役に立っている。

船は停まれない。進みながら上を見上げる。第一竪坑からまぶしい光が水とともに降り注ぐ。

 

この穴を掘るとき、何人も命を落とした。

2010年に近代美術館前に作った《アクアカフェ》は、第一竪坑をモデルにしていた。

琵琶湖疏水関連のデザインに関わることになった機縁でもあった。

 

琵琶湖疏水クルーズ

第一トンネルの出口。

疏水沿いの秋の景色が美しい。

 

琵琶湖疏水クルーズ

 

四ノ宮舟溜の工事がかなり進んでいた。山科乗下船場になるのはここか?

デザイン下案内板の設置は月末という。

 

琵琶湖疏水クルーズ

第3トンネルの手前、田邉朔郎が試作したアーチ型のコンクリートの橋(1903年)。

「本邦最初鉄筋混擬土橋」。鋼鉄のギプスで保護されている。

 

蹴上の下船場で、疏水事務所のもと所長の岡本繁樹さんが現所長さんらといっしょに待っていて下さった。

 

GKとかのデザイン会社に頼めば数十万を越える仕事を無償でやり続けている。

それも2010年の岡本繁樹さんとの出会いからだった。

120周年にもなるのに世間からあまり省みられない琵琶湖疏水をなんとかもっとアピールしたいとの岡本さんの熱意をうけて、扁額案内板のデザインを引き受けたのがきっかけだった。

看板業者への発注代が当時の予算だった。

デザイン費というのがたぶん水道局や京都市の支出項目にないのだろう。

その扁額が来春に始まる観光事業の目玉のひとつになっている。

 

社会的な仕事を個人的な友情でやるというなんとも不思議な事態。

アウトローらしいぼくにふさわしいのかもしれない。

 

 

à la terrain vague

11 novembre 2017 (samedi)

 

テラスをつくって「残してくれ」と言われたものの、過疎高齢化の進む地域のお年寄りたちがクリエイティブに活用するとは思えない。

一方で、「テラス」は芸大の先行移転のシミュレーションでもある。

となれば、将来芸大で生まれそうな活動と、今この場所でできることを重ね合わせて何かできないか。

それで、「テラス=空き地に家を建てる。家は簡易温室。中で読書する」という即興パフォーマンスをやってみた。

 

suujin_terrace

 

天候不安定で肌寒くなってきたが、温室なので中は暖かい。チャックを締め切ると暑いくらいだ。

温室は、造形計画の授業で、視覚優先の時代の嚆矢となった1851年のロンドン万博の「水晶宮」のことを扱ったことに由来する。

作品と場所の関係をテーマにした授業なので、テラスでやるのにふさわしいと判断。温室も家型だし。

もっとも参加した学生は一人だけなのだが。

 

suujin_terrace

 

読書においても条件をつけた。

読んだのは、

1)学生時代のバンド仲間の先輩・吉村喜彦さんの新作短編集『二子玉川物語』。これは高瀬川の上という条件から。

2)神戸芸工大の佐久間華さんからいただいた論文「英国の美術大学におけるPractice-based PhD〜〈実技を伴う博士課程〉実施にあたって何が問題とされたか」。これは京都芸大の将来にかかわる問題という条件から。

(自分はずっと実技系博士課程など廃止してしまえという立場)

 

suujin_terrace

 

suujin_terrace

 

この日はまちづくりに取り組む藤尾まさよさん等の崇仁発信実行委員会主催のまち歩きツアーがあり、ドローンでの空撮と合わせて、三つのコースのいずれも〈崇仁テラス〉を最終的なゴールにしていた。

 

suujin_terrace

 

人間世界とは別に、生きものの世界がテラスのまわりにひろがっている。

<外>は本当に豊かだ。

 

この1〜2ヶ月、「漂流するアクアカフェ」の流れから、「河原」というのがキーワードになっていた。

ぼくが作業していた「河原」は、まさしく網野善彦のいう「無縁」の場である。

川はだれそれが所有する「土地」ではなく、所有者なき境界そのものだ。

「無縁」とは世俗の世界(有縁)から縁を切った場所、「無主」の(主なき)世界。

曰く:

〈「無縁」の勧進上人が修造する築造物は、やはり「無縁」の場でなくてはならなかった。〉

——網野善彦『無縁・公界・楽』平凡社選書、p.168

 

 

 

Simultanéité

4 novembre 2017 (samedi)

 

「崇仁テラス」が設置延長となったものの、利用方法について、地域の人から具体的な提案はあまり期待できない。

個人的にはいっぱい思いつくが(基本は「空き地」を味わうこと)。

芸大の授業で学生たちにアイデアを募ったら、油画M2の遠藤亜季さんがテラスの上で大きな絵を描きたいと。

still movingの最終日前日でもあり、藤尾まさよさんらがドローンで崇仁のまちを空撮するというので、この日に実行した。

 

suujin_terrace

遠藤さんと友人たちとは別に、近所の親子がテラスで憩っていた。

ただ休む。ぼーとする。これもテラスの正しい使い方。

絵を描く。友人と世間話、芸術談義。これもテラスの正しい使い方。

二つの行為は無縁。ただ「同時」。これがいい。

 

suujin_terrace

すぐ向こうを新幹線やJRが行き交うのが見える。これもすばらしい Simultanéité 。

 

Un « événement » est un fait se produisant à un endroit donné et à un instant donné.

De façon immédiate deux événements sont considérés comme simultanés s'ils sont perçus au même instant. Mais une analyse correcte demande que l'on fasse la distinction entre l'émission d'un signal et sa réception par un observateur. Il s'agit en fait de deux événements et non d'un seul. < https://fr.wikipedia.org/wiki/Simultan%C3%A9it%C3%A9

 

suujin_terrace

構造はじつは花巻で見た高村光太郎の智恵子展望台も参考にしている。

仮設なので、ずっとこちらの方がシンプルだが。

智恵子展望台を引き算して、上にベネチアのテラスを載せて、板のすき間を大きく開けた感じ。

 

suujin-terrace

 

上の世界とは別に、テラスの下は水が流れる。光が水と戯れる。木の葉やゴミが流れ、またひっかかる。

これも「同時」。

 

リアリティを織りなすこうした「同時性」のきらめきを表現の基軸にしたのがフルクサスだ。

塩見允枝子先生の演奏会のチラシのデザインもこの日にできた。

水面は同じ場所の異なる時間を重ねた。

 

思うに、ポエティックなものの根底には、こうした「同時性」の露呈がある。

西田幾多郎は、これを「絶対矛盾的自己同一」と言ったのでなかったか?

 

塩見允枝子演奏会