18 février 2024, dimanche
ギャラリーマロニエでの版画のグループ展「Printmaking II :刷りとその解体」の搬出。
言葉を真に受ける単純な人間なので、ぼく自身は「解体 déconstruction」という語を意識したが、全体を見渡せたば、この語は強すぎて空回りしていたように思う。「版画家と版画家でない作家が版画技法を用いた作品制作を行う」程度の内容。去年に続いてぼくは2回目の参加だが、このシリーズは9回目らしい。
マロニエの再活性化をめざす版画家の吉田佐和子さんらの企画。一昨年夏のサイアノタイプのワークショップに軽い気持ちで参加して以来、吉田さんらの情熱に反応して、いつのまにか巻き込まれて協力している。京芸時代なら時間がなくて無理だっただろう。
今回の制作の振り返り:
1_能登の大地震の光景に影響を受け、垂直の安定した壁を前提にしないことと、吉田佐和子さんから、壁を使う人が多いので、床を使ってくれないかと言われたことをふまえ、床に自立型の作品構成を考える。
2_アトリエに一部残っていた「傾斜」をテーマにした+1 artでの個展の作品を再考。作品/作品以外のもの/作品素材を等価に扱うこと。展覧会用の「作品展示」ではなく、作業場/アトリエの状態をめざすこと。
3_特定のコンセプトもできあがりのイメージもなしに、一定の造形原理のなかで制作を進める。手探りでイメージを導く。災害の中でのとりあえずの復興に向けての作業とパラレルに。
4_今できる版画の技法〜サイアノタイプ、ドライポイント、モノタイプを組み合わせる。
5_過去の試作や作品の一部も取り入れ、作品から時間的統一性を排除する。素材とイメージの複合性と循環性を重視する。
こうみると、ぼくはずっとマチスの造形原理とブランクーシのアトリエの影響下にある。
搬入は2/4なのに、取りかかったのはおそく、1月下旬になってから。
ブラインドの加工、webdesignの自習、PowerBookProの故障、歯医者、健康診断・・・、いろいろあった。
1/27 倒れ合い、支え合う異質な面。
1/28 去年の作品で使った枝ともたれ合う面の構成を組み合わせることを考える。
版画の複数性の原点である版木と版画。この対(twin)の原理で制作することを決める。
自分の自発的なドローイングを模写した昔の試作も本のかたちに仕立てて、背中に版木と版画を貼る。
去年のサイアノタイプの試作も「対」でやっていた。ここからかたちを抽出し、空間構成の要素にする。
もたれ合う2枚の板は両面使う。楕円が二つ交わるかたちの版木を上にのせる。その版木でモノタイプを刷る。
2/1、支え合う2枚の板の背中(オモテ面)に、逃げるような2本脚のドローイング。いい線が描けて、今後の展望が開けた気分。
二つの曲ったような曖昧なかたちは、サイアノタイプ試作から抽出。曲げた脚の線と重ねる。
2枚の楕円の板に貼るドライポイントの構想。曲線と直線、二つの丸いかたちと四角いかたち。これらは背中合わせになり、同時に見られない。制作は2/1と2/2。
刷れたドライポイントを仮留めしていると、アトリエに差し込んだ日が当る。手をかざす。
「対」の原理が反響し合ってできているので、タイトルもしゃれで《Be twin》。
作品の出来は65点。しかし次につながる収穫はあったので、よしとする。